歯科医院で働いている人であれば「歯科レセコン」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。しかし、どういったものか詳しく説明できる人はそれほど多くないでしょう。
本記事では歯科レセコンの基本情報から、導入するメリットや活用事例まで詳しくまとめました。さらに、クリニックに適した歯科レセコンの選び方もまとめているので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
レセコンとは?
レセコンとは「レセプトコンピューター」の略で、レセプト作成(診療報酬請求)を行うためのシステムを指します。歯科レセコンの場合は初診料や再診料などの一般的な診療内容に加えて、歯周病基本検査やスケーリングなど歯科医院ならではの科目に対応しています。
病院全体で見た時のレセコン普及率は96.8%(令和6年3月時点)と非常に高く、病床数が400を超える大規模病院になると99.3%にも上ります。
出典:社会保険診療報酬支払基金|レセプト請求形態別の請求状況(令和6年3月診療分)
一方、歯科だけで見た場合の普及率は93.1%とやや少なめです。さらに紙媒体でレセプト作業を行っている歯科は6.9%と、他院よりも高い数値となっています。
このことから、歯科は他の診療科目に比べてレセコンの導入がやや遅い傾向にあると言えるでしょう。
歯科レセコンを導入するメリット
歯科レセコンを導入する主なメリットは以下の4点です。
- 業務を効率化できる
- 診療報酬の計算ミスがない
- 受付窓口の待ち時間削減に繋がる
- 診療報酬改定に対応できる
これらのメリットが歯科レセコンによって得られる理由について、詳しく解説してきます。
業務を効率化できる
歯科レセコンは必要な情報(診療内容・患者情報・傷病名など)を入力することで、簡単にレセプトが作成できます。紙媒体に比べてかかる時間も手間も大幅に削減できるので、少ない人員でも効率的に業務に当たれます。
診療報酬の計算ミスがない
診療報酬の計算はレセコンが自動で行うため、ミスをする心配がありません。ただし、スタッフが登録した情報をもとに計算を行うため、情報に誤りがあると実際の内容とレセプト内容に齟齬が起きてしまう点には注意が必要です。
とはいえ、計算機を使って紙媒体に記載するケースに比べればニューマンエラーは起きにくいため、トラブルのリスクは軽減できます。
受付窓口の待ち時間削減に繋がる
レセプトの自動作成により手作業で記入・計算する手間が省けるので、会計業務のスピードが上がり、受付窓口の待ち時間削減に繋がります。予約管理や処方せんの印刷ができる歯科レセコンを使えば、作業効率がさらにアップします。
「会計時間が長い」「窓口で待たされる」といったクレームを受けることが多い歯科医院では、レセコン導入により患者さんの満足度アップが期待できるでしょう。
また、スタッフの業務負担や残業時間も減るため、人件費の削減にもなります。
診療報酬改定に対応できる
歯科レセコンは原則2年に1回行われる診療報酬改定にも対応しています。情報をアップデートするだけで良いため、事務スタッフが変更内容を覚える必要がありません。レセコンが原因で計算ミスが起きることはないので、改定直後でも安心です。
歯科レセコンの選び方
歯科レセコンの導入を決めたら、以下のポイントを踏まえて適切なサービスを選びましょう。
- 導入費・維持費が予算内に収まる
- 必要な機能が備わっている
- サポート体制が整っている
- スタッフが操作しやすいか
レセコン導入には費用も時間もかかるため、後悔しないためにも各ポイントをしっかり確認しておくことが大切です。
導入費・維持費が予算内に収まる
歯科レセコンの導入費や維持費はサービスによって大幅に異なります。
一般的に自社でサーバーを持つオンプレミス型は高額で、導入費だけでも数十万~数百万するものも多いです。対して、インターネット上のサーバーを使用するクラウド型は初期費用が無料のサービスも多く、高くても数十万程度となっています。
例えば株式会社ベントサイドが提供するクラウド型歯科レセコン「アットレセ」は、初期費用0円かつ月額14,410円と非常にリーズナブルです。
どちらのタイプも費用が払えなくなると利用停止になり業務に多大な支障が生じるため、必ず予算内に収まるサービスを選びましょう。
必要な機能が備わっている
歯科レセコンには必ずレセプトの作成機能が付いていますが、それ以外にも便利な機能を有するものがあります。主な機能は以下の通りです。
- 診療報酬改定時の自動アップデート
- 情報の自動バックアップ
- 入力エラーの自動チェック
- 領収書・処方せんなどの書面印刷
- 電子カルテとの連携
- 来院・予約管理
- リコールはがきの印字・宛名データ出力
歯科医院では定期検診のための案内状を出すことも多いため、リコールはがきの印字・宛名が出力できるタイプだと受付の業務負担が軽減します。
サポート体制が整っている
歯科レセコンに不具合が起きると、レセプト作成だけではなく受付作業全般に影響を及ぼすため、サポート体制の整ったサービスを選びましょう。
不具合が起きた時は1分1秒でも早い対応が求められます。出張対応の場合はサポートスタッフの到着まで待たなければならないため、サポートデスク側で遠隔操作が可能なサービスがおすすめです。
スタッフが操作しやすいか
スタッフができるだけスムーズにレセコン作業を行えるよう、直感的に操作しやすい歯科レセコンを選ぶことも大切です。機能が充実していても、操作が複雑化してしまうと十分に使いこなせません。
歯科レセコンの中には無料体験期間を設けているものもあるので、導入前に使用感を確かめておくと良いでしょう。
歯科レセコンの導入方法
購入する歯科レセコンが決まったら、以下の方法で導入していきます。
- レセコン導入の計画を立てる
- インストールと初期設定を行う
- テスト運用を行う
- 日常業務での運用を開始する
導入方法はクラウド型かオンプレミス型かで異なりますが、今回は導入作業が容易でリーズナブルなクラウド型に絞って各手順の導入ポイントを解説します。
歯科レセコン導入の計画を立てる
クラウド型の歯科レセコンを導入するためには、システムのインストールが必要です。すでに開院しているクリニックの場合は、作業が業務の支障にならないよう、導入のタイミングを考えましょう。
また、導入後はスタッフがレセコンを扱えるように研修する必要もあります。研修期間はスタッフの人数やスキルに合わせて設定してください。
サービスの加入と初期設定を行う
クラウド型のレセコンはサービスに加入して、ネット接続が可能なPCやタブレットからログインするだけで利用できます。オンプレミス型は機器の搬入が必要なので、開院後のクリニックで導入する場合はクラウド型がおすすめです。
インストールが完了したら、指示に従って初期設定を行いましょう。導入作業に不安がある方は、導入サポート付きのサービスを選んでおくと安心です。
テスト運用を行う
導入後は必ずテスト運用を行いましょう。初期設定の内容や登録データに誤りがないか確認するためです。同時にスタッフの研修を行うとスムーズです。
また、テスト運用ではあえて誤りのある内容を打ち込み、エラーチェック機能が働いているかどうかの確認もしておきましょう。
日常業務での運用を開始する
テスト運用で問題がなければ、日常業務での運用を開始します。稼働後に問題や疑問点が生じたらすぐにサポートを受けられるよう、相談窓口への連絡方法などをスタッフ間で共有しておきましょう。
歯科レセコンの具体的な活用例
実際の現場では、歯科レセコンを以下のような状況で活用しています。
- 患者データの分析による新規患者の獲得
- 非常時における身元確認の効率化
- 訪問診療時や月末統括作業のリモートワーク化
歯科レセコンは患者さんの情報や診療履歴をデータ化して一元管理できるため、データ分析に役立ちます。親子の患者が多ければファミリー層、審美歯科の患者が多ければ同年代をターゲット層としてアプローチすると、効率的な集客効果が期待できます。また、大災害や事故が起きた際、歯科情報をもとに被害者の特定を進めることも可能です。
クラウド型の歯科レセコンなら病院外からでも利用が可能です。利用設定を行ったPCやタグレットがあれば、訪問診療先や自宅からでも情報の記録や閲覧ができるため、業務効率がアップします。
まとめ
歯科レセコンは日々の業務から有事の時まで、非常に役立つツールです。紙媒体でレセプト作成を行っている歯科医院では、業務効率の飛躍的な向上が期待できます。また、患者情報をもとにマーケティングを行えば新規患者の獲得にも繋がるでしょう。
導入に興味がある方は費用や機能を比較検討し、最適なものを選びましょう。クラウド型の歯科レセコンでは無料の体験期間を設けている場合もあるので、一度試してみてはいかがでしょうか。